近藤典行

もしあなたがこれからハリウッドスターを目指すなら、
まずなにより細心の注意を払っていただきたいのは芸名選びである。
ハリウッドスターとはAV女優の次に、
芸名でその後の活躍を決定付けてしまう商売に他ならない。
名は体を表す、紛れもない事実だ。

「アントニオ・バンデラス」、
この名を聞けばいかがわしいラテン系男の役はこいつに任せよう、
ハリウッドのPなら誰しもが思うはずだ。

「ジャン=クロード・ヴァンダム」、
こんな芸名を事務所の社長に付けられたら
キックボクサーかソルジャーかこれ以外の役はやれまい。

「マコーレー・カルキン」、
その危険な響きはゴールデン洋画劇場のラテ欄見た時から破滅への道を予想させた。

そう、アジア人からなぜハリウッドスターが生まれないのか、
やはり「ジャッキー・チェン」ではいまいち弱いのだ。
唯一最も近づいた「ブルース・リー」、その凄さは芸名の端正さから証明できる。
「マシ・オカ」って。

「レオナルド・ディカプリオ」の『タイタニック』での興行的成功は、
その芸名の持つヨーロッパ性が良い方向に作用したといえる。
以降のディカプリオのなんともしっくりいかない感じは、
それがアメリカ映画と相容れないからで、
ことアクション映画でのディカプリオに対する「マット・デイモン」の優位は、
あのゴリラ顔も然ることながらその名が持つアメリカ性にすべて集約されている。

ならば、最強かにみえる「ジェームス・ディーン」を抑えて
歴史上一番かっこいい芸名を持つハリウッドスターとは果たして誰なのか。
「マイケル・J・フォックス」である。
小柄であることをはね返して彼が摩天楼をバラ色に染め上げるまで上りつめられたのは、
全米一かっこいい芸名のおかげであった。

ちなみに、私の映画館初体験ならびにアメリカ映画初体験は
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』である。
できることなら、シネコンも指定席入れ替え制もなかったあの頃に戻りたい、
デロリアンに乗って。
それはもちろん、三丁目の夕日的な郷愁とは一切無縁の地平に位置していることは
言い添えておきたい。

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