プロトコラム第1回 テーマ「初体験」

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「天井裏から愛をこめて」


こんにちは。早川阿栗といいます。
今回のコラムのテーマは「初体験」ってことなので、
まあ、当然、誰もが初体験って言ったら、
あの、例の、あの、「初体験」のことをまず最初に想像すると思うので、
僕ももちろん、あの初体験について、赤裸々に書こうと思います。


エロ本が屋根裏から出てきた初体験。

出たー。セックスのことじゃないかしらん、と思わせておきながら、実は違うやつ!!
なんか、エンタの神様とかでセーラー服を着た人が、
お客さんに振ってたようなやつー!!
何エッチなこと考えてるんだよ!
としたり顔で言ってたやつー!!
竹刀をしなやかに持ちながらのやつー!!
わたしよりかわいいー、という黄色い声援の中でのやつー!! 

って、いきなり本題から丸ごと逸脱している感こそありますが、
えーと、初体験の話ですよ。
まあなんていうか、エロ本が屋根裏からって、
それはお前が隠すか隠さないか次第じゃないか、って感じがあるかもしれませんが、
そうじゃなくてですね、高校のときの話なんですけど、ちょっとした事情があって
(って母の単身赴任に僕がついていった、ってだけなんですけど)、
母と二人で実家を離れてアパートを借りて住んでいたんです。
 
当時は思春期のもやもやを晴らすには、DVDもネットもない時代ですから、
紙媒体に全幅の信頼をおいていたわけですよ。そういう時代ですよ。
エロ本が活気づいていた時代、とか言うと、なんか、少しはドキュメントぽいですけども、
もっと言うと、べっぴんがデラだった時代、みたいな感じなんですけども。
それ、エロ本特定されるじゃないか、という感じこそありますけども。
デラ、という言葉の響きだけで、なんか、今すぐ一人になりたい、
と心底願うような時代だったわけですけども。

まあ、それはともかくですね、エロ本を買ったときに、どこかに隠そうかと思って、
最初は机の中とかに入れてたんですけど、家庭環境のせいなのか、
両親の教育のたま物なのか、エロ本が見つかったら人生終わりだ、と思っていた僕は、
そんな机の引き出しとか全然、守備力低いじゃねえか、って感じだったんです。
おらが村のエロをこれでは守れないじゃないか、っていうような。
もっと言うと、デスピサロが、自分自身に向けて、
寝言で、何度も、ルカナン唱えてた! みたいな。
ぐっすり(グッドスリープ)の上に、いつの間にかもう守備力5!みたいな。
やばい、デスピサロ!うしろー!勇者が、うしろー、っていうか、枕もとー!

それでですね、自分の部屋でね、より安全な隠し場所を探し求めていたんですけどね、
あるときのことですよ、母だけが実家に戻って不在だった、夏の夕暮れのことです。
それはもう、ものすごいビッグチャンス到来なわけですよ。

母不在のその日、エロ本の隠し場所の調査は、
ついに押入れまでその探索がものすごい勢いで進み、たゆまぬ努力の結果、
押入れの上の天井のね、一部分がね、はめ込みタイプの床みたいにね、
パコっと外れることに気がついたんですよ。
これは多分構造上の問題で、建てている時点から
そういう天井裏みたいなところに上がれるようになっていたと思うんですけど、
僕が住むアパートは二階建てで、その二階の部屋を借りていたので、
そういう秘密の場所が見つかったんです。
もうね、そのね、押入れの天井の床がね、バコっと上に持ちあがった瞬間のね、
音とか、感触とかはね、今でもはっきりと覚えてますよ。
片手で板を押し上げ、片手でガッツポーズみたいな。あと、最高の笑顔ね。
最高の笑顔ね。

えーと、今、描写的に、最高の笑顔が二回あったみたいなことになってますけども、
まあ、それくらいのね、勝利モードですよ。
なんか、屋根裏のスペースは、熱い空気が滞留していて、
それが僕の高揚した気分とあいまって、えらいことになっているわけですよ。
んで、もうむちゃくちゃ可能性が開けた、
みたいな気持ちになってるわけですよ、僕としては。
ただ、エロ本を隠せる、ってだけなのに、もうこれで俺は間違いない、問題ない、
みたいな、全能感すらあって、なんか、それだけで勃起しちゃってる、みたいな。
じゃあ、このまま、延々、天井の開け閉めしてたら、
それだけでもうフィニッシュ迎えちゃうんじゃないか、みたいな。
どんな斬新な自慰なのかわからないですけども、それくらい、大興奮、ってことなんです。

それでですね、そのスペースをよく見ていると、
というか、目が暗いところに慣れてきたからだと思うんですけど、
ちょっと奥のほうに、箱があることに気づいたんです。
あれ、これ、段ボールじゃねえ?とか思いながら、
どこかで冷静になりかけている自分もいて、どんどん怖くなってるわけです。
なに?これは、いったい、誰が置いたの?みたいな感じで。
やだ、怖い!四角い!

いや、形は別に怖くないだろ、って話なんですけども、
とりあえずですね、思い切り天井裏に手を伸ばして、
段ボールをずりずりと引きずって、下に降ろしてみたんですよ。
で、テープとかで封もきちんとされてなくて、開けてみると、中には、エロ本ですよ。
やだ、すごい! こっちのほうが四角い!
一旦、落ち着いて考えてみてほしいんですけど、
エロ本の隠し場所を探してて、逆に、大量のエロ本が目の前に現れる、
って、ちょっとベクトルおかしくないでしょうか。
しかも、誰のだよ、っていう。全然、趣旨違ってるよ、っていう。
なんか、コナンくんだったら、雪まみれの山荘に行ってみたけど、
いるのはコナンくん一人、みたいな。
事件が、今夜......絶対起きない!今夜12時誰かが......死なない!
しかも猛吹雪で、雪山から出られない!助けて!救助的な意味で、
とコナンくんが言ったとか言わないとかの話ですよ。
もうそこは、見た目が子供なのに、天才的な推理力とか関係ないから。
謎は解けても、雪は解けないからね!
いや、うまいこと言っても、一人、みたいな。
とりあえず、蝶ネクタイのマイクで声を変えて、ヘルプミーを言ってみたけれど、
それでも一人、みたいな話ですよ。
っていうか、自分で書いておいてなんなんだけども、
コナンくん、どうして、一人で雪山になんて行ったんだ!
なんで、自然を甘く見てるんだ!って話なんですよ。
保護者の監視怠慢っぷりときたら!って話ですよ。
いや、話かどうかは、もちろん、わからないですけども。
相変わらず、例えの精度だけには当方自信があります顔をしてて、申し訳ないですけども。

でね、華麗なる軌道修正をさせてもらうならば、段ボールの話なんですけどもね、
僕は、なんか、そこまで潔癖症じゃないんですけど、
でもやっぱり友達のものならともかく、
誰のかもわからないエロ本が大量に箱詰めになって出てこられても、
先ほどまでの高揚感やら、性器のぎちぎち感の半分は、
もう祭りのあと、みたいなものですよ。
撤収ー!!!って声すら、どことなく力ないわけですよ。
しかも、エロ本は、なんていうんですかね、制服物っていうんですかね、
そういう系のやつがたくさんなわけです。

いや、もちろん、ぱらぱらと開きますよ。
完全に心こそ折れていますけれど、日本人って、もったいない、
という心意気の民族じゃないですか。
じゃないですか、って真剣な顔で言われてもみなさんは困るだろうけど、
思春期って怖いですよね、得体の知れなさはあるにしても、
それでも、エロはエロだ、エロは何も悪くない!
ってか、そこに俺が求めているものがあるかもしれない、
っていう探究心は心の中でがっつりとあるわけですよ。
アンビバレンツな十代ですよ。
今度は何が怖い?
今度はアンビバレンツが怖い!(出ました、新作落語)。

で、まあ、一通り段ボールに詰まったエロ本をぱらぱらと検分し終わります。
その過程で、もはや、得体の知れない誰かのエロ本、
というものに対する恐怖はほとんどなくなっています。
制服物は好みではないにしても、まあ、一応、それは、エロ本です。
むしろ、一度、自分の手に触れて目を通したんだから、
これはもう僕のものじゃないか、とすら思っているんですけども、
段ボールにね、ビデオテープがあることに気がついたんです。

いや、本当は、最初からもう釘づけ、というか、
明らかに転校してきたクラスの中に、一人だけ金髪の外国人がいるじゃん、
しかも、その子、明らかに、ドリュー・バリモアじゃん、
ってくらいの存在感があったんですけども、まあ、落ちつけよ、
ものごとには順序があるじゃないか、みたいな感じで、
まずはエロ本にとりかかっていたわけですよ。
でね、非マドンナのエロ本たち(和風顔)と一通りと自己紹介がすんだところで、
やっとビデオ(ドリュバル)とご対面ですよ。
でもね、テープにはラベルが貼ってないんですよ。
ああ、これはもちろん、もちろん期待もするけれど、勇気がいるよね、って思いながら、
僕は自分の部屋を出てリビングに移動して、テープをセットするのです。
当時なんて、AVなんて普通に借りれる環境なかったですし、
そういうエロ的インフラは、もう僕には想像すらできない領域だったから、
もうね、これはものすごいステップアップ状態なわけなんですよ。
俺は今から、大人の階段を上る、みたいな。
もう同級生のこと、お子様に思えて仕方ないだろうな、みたいな。
いやいや、お前こそお子様そのものだし、
何、時代と寝たみたいな感じになってるんだって話なんですけども。
って、全然例えがおかしいのは、時代と寝た、
ってただ言いたかっただけだからなんですけども。
言いたかったら何言ってもいいのか、このコラムは、って話なんですけども。
よし、じゃあそれならば、ワクチン。
いや、別にワクチン、って言いたかったわけじゃないのに、今、言ってみたんですけど。
むしろ、語感で、ちょっと意味ありげにすら聞こえちゃって、
こっちが迷惑なんだよね、みたいな話なんですけども。
 
でね、ビデオの話なんですけど、むちゃくちゃどぎまぎしながらも
思いきってテープを再生したら、いきなり、お尻のアップですよ。
もうね、効果音が、ペロン、以外の何物でもないくらいの、お尻のアップ。
しかも、どう見たって公衆便所です。
あの便器は、TOTOだよね、とか冷静に見てるわけじゃなくて、
もうね、これは完全に、アウトですよ。
お尻、意味わかんない!
いや、お尻の意味はわかるけれど、
しゃがんでいるお尻だけがアップになっている意味がわからない!
ペロン、とかそういう意味がわからない!
ああ、今、お尻から、新しい生命体が、って怖い。
お尻、怖い。やだ!お尻って、四角くない!

むちゃくちゃ慌ててテープを取り出しました。
もうね、僕にしたら、こんなもんこそ、呪いのテープですよ。
完全なる、呪いそのものですよ。
このテープを見たら......二週間後に、お前も、トイレに、行く!
とか言われたら、いや、それは、重く苦しい便秘だったんだね、
とかそういう話なんですけども、何あれ。
何、お尻、むき出してるわけ!
絶対、だめじゃん。う
んちは、人に、見せちゃだめなものじゃん! 

もう一気に、段ボールの中身そのものが不健全に思えてくるわけですよ。
エロ本の段階では、そういうスカトロ的な要素のはなかったのに、
ビデオで、一気に趣旨が変わってくるわけです。
しかも、それが、自分の部屋の天井裏に置いてあったんですよ。
きゃああああ。
もうね、まじで怖い。
これ、万が一、母親に見つかったら、制服趣味とかそういうレッテルとか以上にね、
僕ときたらね、もう黄金の子ですよ。
意味がわからないけど、本物のゴールデンボーイですよ。
まだ普通に自分が買ってきたエロ本ならともかく、ステップアップしすぎですよ。
しかもね、完全なる冤罪ですよ、これは。
 
僕は、即座に段ボールを丸ごと捨てる決意をしました。
当時、僕の住んでいたところは新潟市で、
アパートのすぐそばには日本一の信濃川が流れていたのです。
よし、これは、海に返そう。
何、大河を返却口みたいな捉え方してるんだ、って話ですけども。
でも自分を冷静に省みることもできず、
慌てて段ボールをガムテープで思い切り封印しました。
そして夜が来るのを待ちました。
母親は実家に戻っていて、翌日まで帰って来ません。
今、これをやらなくては、僕は、これからスカトロマニアとして生きていかなくてはならないんだ!!
それだけは絶対に避けなくてはならないんだ!!
めちゃくちゃな論理ですが、僕の中ではもうこんな危険なものを
自分の部屋に置いておきたくない、という一心なわけです。
絶対に、捨ててやるからな!
もうね、断固たる決意ですよ。
やだ!パピコ二本とも食べたい!
などとはね、レベルが違うんですよ。

僕は力強い決心を胸に、辺りが鎮まるのを待ってから、
夜の信濃川に段ボールを抱えて運び、そして川岸から落としました。
これはまるで地球にも、そして自分にもやさしくない非エコ的行為です。
本当に申し訳ないですけれども、でもね、ときに、人は、地球を傷つける。
そうなんです、人はときに、地球を傷つけちゃうものなのです。

僕は傷つきながら、自分自身を傷つけながら、全てを水に流しました。
夜の信濃川は広くて、忌まわしき段ボールはじわっと川の水によって浸食されて、ゆっくりと沈んでいきます。
それでもきちんと海まで運ばれたのか、川底に沈んだのかは定かではないですけれど、
僕は二度と、天井裏を開けることはありませんでした、
ええ、もう二度とあんな目には会いたくないですからね......ということはなく、
そういうことはまるでなく、もうその足で、
新しい自分のための、自分のためだけのエロ本を買いに行き、
早速、天井裏に隠しました。
やったね、僕だけの秘密の場所。

という、天井裏からエロ本が出てきた初体験の話でした。
いや、その後、二度とそんな体験してないし、
人生にそう何度もあっても困るんですけど。


(※このコラムは地球への真心でできています)

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